海外赴任や駐在で日本を離れる際にも、資産形成を継続していきたいと考える方は多いでしょう。しかし、日本国内とは異なる規制や制度の中で投資を行うことには、特有の注意点とリスクがあります。本記事では、海外赴任・駐在中に知っておくべき資産運用のポイントについて、投資商品の選択肢やリスク、税制の違いを含めて詳しく解説します。


1. 海外赴任・駐在中でも積立投資は続けられるか

日本で開始した積立投資は、基本的に海外赴任中でも継続が可能です。ただし、金融機関や投資対象により手続きや制限が発生する場合があり、事前確認が重要です。

1.1 課税口座での積立投資

課税口座での積立投資は、一般的に海外赴任による制限は少なく、継続可能です。ただし、現地での申告義務が生じることがあり、居住地の税制にも影響を受ける可能性があります。

1.2 非課税口座での積立投資

非課税口座の利用は、日本国内の居住者に限定される場合が多く、海外転出時に影響を受けることが少なくありません。

  • 一般NISA: 海外赴任中の積立には制限があり、転出の際には金融機関への申告が必要です。
  • つみたてNISA: 非課税枠の新規利用は停止されますが、既存の資産の保有は可能です。
  • ジュニアNISA: 未成年者が日本に居住していることが条件であるため、駐在によって利用が制限される場合があります。
  • iDeCo: 日本国内の居住が条件のため、海外赴任中は拠出が一時停止となりますが、帰国後に再開が可能です。

2. 海外駐在中の保険契約における注意点

貯蓄型生命保険を含む保険契約は、一般的に契約自体が無効になることはありませんが、保険料の支払い方法に注意が必要です。日本の口座からの引き落としができない場合、代理人を設定したり、現地で送金手続きを行うなどの対応が必要になります。


3. 海外赴任先での積立投資の注意点

3.1 非居住者扱いによる制限

長期間の海外赴任の場合、日本国内の非居住者として取り扱われることで、NISAやiDeCoなどの非課税制度が利用停止となる場合があります。

3.2 税務申告義務と罰則

海外赴任中に日本国内外で得た投資収益は、申告が必要です。無申告のままにしておくと罰則の対象となることもあるため、最新の税制を確認しましょう。

3.3 現地企業に就職した場合の影響

日本の企業からの駐在ではなく、現地の企業に就職した場合、日本国内での金融商品の利用が制限されることがあります。


4. 海外在住者向けの投資(オフショア投資)

4.1 選べる金融商品

  • オフショアファンド: 税制優遇がある国で運用されるファンドで、長期的な資産形成が可能です。
  • 外貨建て保険: 複数通貨での資産分散が可能で、通貨リスクを抑えながら資産を増やす手段として有効です。
  • プライベートバンク: 高額資産を保有する個人向けに、個別の資産運用プランを提供してくれます。

4.2 推奨される投資先

  • 積立型オフショアファンド: 定期的に積み立てを行うことで、長期的な資産形成が期待できます。
  • 外貨預金: 為替リスクを抑えつつ、資産の分散を図ることが可能です。
  • 香港の貯蓄型生命保険: 相続対策やリターンが期待できる商品で、長期的な資産形成に向いています。

5. 海外在住者が避けるべき投資

海外在住者は、日本とは異なる環境でのリスクを理解した上で慎重に投資を行うことが必要です。

  • 現地通貨での投資: 現地通貨は変動リスクが大きく、不安定な政治経済状況によって為替損失が生じる可能性があるため、安定的な通貨を用いるか、リスクのある投資には慎重に取り組む必要があります。
  • 現地の不動産投資: 現地の法制度や規制に慣れていないまま不動産投資を行うと、想定外のトラブルが発生することがあります。

6. 海外と日本の税制の違いと対応

6.1 日本国内での住民票と税務申告

海外赴任中に日本国内での住民票を抜くことで、日本の所得税や住民税の課税対象外となりますが、現地で得た収益は現地の税制が適用されます。

6.2 海外資産に関する申告義務

特定口座での収益が日本円で20万円以上の場合、日本国内での申告が必要です。海外での収益も同様で、申告の際には外国税額控除などを活用することで、二重課税のリスクを軽減することができます。


7. 日本への帰国後の資産運用

7.1 NISAやiDeCoの再開

帰国後は、再度NISAやiDeCoの非課税口座を利用可能です。

7.2 帰国後の申告義務

帰国時には、現地での収益や保有資産に対する申告を行い、日本での納税義務を確認する必要があります。


8. まとめ

海外赴任や駐在中でも資産形成を継続することは可能ですが、非課税制度の利用制限や保険商品の扱いには注意が必要です。日本と赴任先の税制や金融規制を十分に理解し、無理なく投資を継続できるように準備しましょう。

現地の金融環境や法律が頻繁に変化する場合もあるため、現地の専門家や金融アドバイザーに相談しながら、長期的な視点で資産形成を進めることが推奨されます。

 

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